「みんなの眠ラボ」初の試みとして、2月18日(金)、漢方の専門家である櫻井大典先生をお招きして、更年期でお悩みの会員様との座談会を開催。
女性特有の体の不調と睡眠をテーマに、漢方および中医学の観点からお話いただきました。
「漢方って何?」「更年期の対策は?」といった、多くの女性にとって気になる悩みに向き合った今回の座談会。その内容をお届けします。
漢方って何だろう?
(櫻井大典先生) 身近になってきた漢方ですが、「よくわからない」「ちょっと敷居が高い」と感じている方もいるかもしれません。漢方の役割とは、そもそも何でしょう。
漢方は、「病気にならないためにどうしたらいいか」という真髄で、そのために行うことを「養生」といいます。
例えば、「胃腸に負担をかけないためによく噛んで食べる」のもひとつの養生で、単に病気になることを防ぐだけでなく、健康に長生きするための「転ばぬ先の杖」といえます。
養生のなかでも重要なことのひとつに食養生があります。
体は食べたものから作られるので、その原料となる食事を整えることが健康につながります。
私が相談を受けるときには、日々どういったものをいつどれくらいの量食べているかなど、食習慣をこと細かに尋ねます。そのうえで、では漢方的にどうしたらいいかと修正していくのです。
なので、「今の症状を改善する」というのもひとつの漢方の仕事ではあるのですが、「この先病気にならないためにはどうしたらいいか」という知恵をつけてもらうことが、漢方の重要な役割なのです。
7年周期に注目。更年期にどう向き合うか
(櫻井大典先生) 女性の身体は、思春期・成熟期・更年期・老年期の4つのライフステージに分けられます。更年期になると、女性ホルモンのひとつであるエストロゲンの減少によりさまざまな身体の不調が現れますが、中医学ではこれを「女性の体に7年周期で訪れる変化」と捉えています。
何が変化するかというと、「腎」といって成長と発育・生殖をつかさどる部分で、生命力の要ともいえるもの。
28歳で身体や生殖機能がピークを迎え、35歳で肌や髪が衰え始め、42歳でしわや白髪が増え、49歳で閉経が近付くというように、7の倍数が転換点になるというわけです。
不健康な生活習慣を重ねてきた人はこの腎のエネルギーが低く衰えが早まりますし、逆に、健康的であれば高くなる。更年期に向き合うには、「腎」を元気に保つことが大切です。
お悩みQ&A
―― (あすかさん・30代) 長くゆっくり眠れる方法はありますか?
2人の未就学児がいる兼業主婦です。最初に妊娠した頃からだんだん眠りの時間が短くなってきて、連続睡眠時間は3時間くらいです。また、仕事が忙しくなると不安や焦りから睡眠中にハッと目覚めることがあり、最近、ちゃんと寝たという感覚がありません。ゆっくり、長時間眠れる方法はありますか?
(櫻井大典先生) 睡眠には、漢方でいう「血(けつ)」が必要です。血は、精神の安定に作用すると考えられているので、これが足りていないと心が不安定になってよく眠れない、というわけです。
そもそも妊娠・出産時は、血がめちゃくちゃ消耗します。そして、続く子育て作業。寝ないと血は養われないのに十分休む間もない多くのお母さんたちは、「血が足りない・質が悪い」状態にあることでしょう。
まずは、食生活の見直しを。レバーや緑黄色野菜、黒ごま、黒豆といった黒い食材などが知られますが、ぜひ「補血食材」で調べてみて、積極的に摂ってください。でも、これらは健康維持を目標とする「養生」の部類。すでに症状が出ている場合は、漢方薬の専門に相談してみることをお勧めします。
そして、漢方における睡眠の考え方は「何時間寝ればよい」というものではなく、時間帯が重要です。血を浄化して十分に養うためには、23時から3時に眠っていることがポイント。
仮に深夜1時をまわって8時間寝たとしても、あまり意味がないということになります。時間帯を意識して、質のよい睡眠を目指してください。
✔︎「補血食材」を積極的に食べる
✔︎ 睡眠をとる「時間帯」が重要
―― (こまちさん・50代) 寝つきが悪く、頻尿が気になります。
毎日同じ時間に布団にはいり、音楽や読書で心を落ち着かせるよう心がけているのですが、更年期に入ってますます寝つきが悪くなりました。夜中トイレに目覚めることが増え、熟睡もしにくいです。食生活では健康に気をつけ、意識して温かいものを飲んだり乳製品を摂るようにしているのですが、どうしたらよいでしょう?
(櫻井大典先生) 漢方では、胃腸は水分によって弱るとされています。頻尿を感じる場合は、水分摂取を減らすことが第一。ふつうに飲食する分には問題ありませんが、もし健康にいいと思ってお茶類や乳製品を過剰に摂取しているなら、冷えやむくみを招き、胃腸に負担をかける可能性があるので控えた方がいいでしょう。
「のどが渇いたと感じたら一口だけ飲む」を心がけてみてください。
また、「補腎」といって、「腎」を元気にする対策が必要です。
脂っこいもの、甘いもの、冷たいものなどは胃腸を弱らせるので、頭で食べたいと思っていても体は欲しがってはいないんです。
もちろん食べてはダメということではないですよ!摂取を控えることは、食べたいものを美味しく楽しめる健康体を維持するための「養生」のひとつ。ふだんは養生して週末に好きなものを食べるなど、「1週間内で帳尻合わせ」を意識するといいでしょう。
薬膳など体を温めるものを摂るのは大切なことですが、温めすぎるとのぼせるように、極端なのはNG。バランスよく飲食を楽しんでくださいね。
✔︎ 水分の摂りすぎに注意。のどが渇いたときに飲む
✔︎ 頭と身体が欲する食べ物は別もの。1週間内で調整する
座談会を終えて
(あすかさん)
以前病院で漢方を処方されたことがありますが、あまり理解できていませんでした。今回漢方についての知識を得て、自分の状態とその対策まで考えることができました。「睡眠不足の悩み」という点では同じでも、他の方と私とではまったく症状が違うことから、「人によって体質は違うのだから、同じ薬を飲んでも良くはならない。自分に合った対策が必要」ということに気付けたのは、大きな収穫でした!
(こまちさん)
漢方についての説明がとても具体的でわかりやすく、自分が以前婦人科で処方されたのはこれだったのかと、改めて知ることができました。また、先生に直接質問できたのは貴重な体験でした。「更年期」ってざっくり一括りにしていましたが、いろんな症状があるんですね。私としては健康を意識しているつもりだったのに、ちょっと違ったのかな。これを機に、自分の体についてもっと考えていきたいです。
あすかさん、こまちさん、今回の座談会にご参加いただきまして、ありがとうございました!
この座談会をきっかけに、おふたりに良い睡眠が訪れますこと、スタッフ一同、お祈りしております。
櫻井大典先生の座談会でのお話の一部をご紹介させていただきましたが、みなさん、いかがでしたでしょうか。
これからも、眠りに関するさまざまなテーマで、座談会の開催を検討しています。
どうぞ、楽しみにお待ちください。